PRIMARY ESSAY / FULL TEXT
生成AIとの対話における状態変化とその一回性・不可逆性について
—— プロンプトエンジニアリング批判から、履歴生成の理論へ
本稿は、生成AIとの対話を、単なる情報取得や出力生成ではなく、対話者の問い・自己像・評価軸・行動可能性を変化させる出来事として捉える。ここでいう状態変化とは、新しい情報を得ることではなく、何を問題と見なし、どこから問い、次に何を問えるかが変わることである。そのような対話は、反復可能な壁打ちでありながら、同じ会話へは戻れない。一回性と不可逆性を伴うこの過程を、本稿では履歴生成として捉え、プロンプトエンジニアリング中心の理解を乗り越えるための理論的枠組みを提示する。
目次
- 第1章先行研究の予備的配置
- 第2章本稿の方法
- 第3章問題設定
- 第4章プロンプトエンジニアリング的理解の限界
- 第5章対話は情報交換ではなく状態変化である
- 第6章一回性:同じ会話が二度と起きない理由
- 第7章不可逆性:巻き戻せないのはログではなく主体状態である
- 第8章対話事例記録から見る状態変化
- 第9章ケースA:関係調整の返信相談から生活運用の再設計へ
- 第10章ケースB:生成AI理解から自己理解へ反転した対話
- 第11章ケースC:曖昧な実務要望が外部確認に耐える作業へ変わる
- 第12章ケースD:業務判断を外部化し、判断資産化した対話
- 第13章AI側モード:状態変化を支える外部構造
- 第14章状態変化ログという方法
- 第15章依存性と倫理:世界への橋か、世界の代替か
- 第16章結論:生成AIとの対話は不可逆な履歴生成である