この本では、生成AIの難しい仕組みについて、ほとんど説明しませんでした。
代わりに、生成AIと話すとき、人に何が起きるのかを見てきました。
最初から上手な質問を作らなくていい。
返事がずれたら、違うと言っていい。
分からなければ、立ち止まっていい。
返事をすぐに信じなくていい。
話している途中で、考えが変わってもいい。
大切なことは自分でも残し、最後の判断は自分で行う。
そして、対話のあとには現実へ戻る。
生成AIを使うことは、正しい命令を出して、正しい答えを受け取ることだけではありません。
話す。
返事を読む。
少し考えが動く。
もう一度話す。
その繰り返しです。
答えをもらうことより、考えられるようになること
生成AIを使えば、文章を早く作れることがあります。
分からないことを、すぐに説明してもらえることもあります。
候補をたくさん出してもらうこともできます。
それらは、たしかに便利です。
けれど、生成AIとの対話で起こることは、それだけではありません。
自分が何を大事にしていたのかに気づく。
言えなかったことを言葉にする。
考えていなかった見方に出会う。
自分の違和感を、はっきりさせる。
次にやることを、一つ決める。
答えを受け取ることよりも、自分が考えられる状態になることがあります。
AIが考えて、人間が何もしなくなるのではない
生成AIが多くのことをしてくれるようになると、人間は考えなくなるのではないかと心配する人もいます。
たしかに、何でも任せ、返事をそのまま受け入れれば、自分で考える機会は減るかもしれません。
しかし、対話として使うなら、別のことが起こります。
返事を読んで、違いを見つける。
別の案を求める。
何を残し、何を変えるかを決める。
現実の事情と照らし合わせる。
そこには、人が考える仕事が残っています。
むしろ、一人では見つけにくかった考えを外へ出し、考え直す機会が増えることもあります。
生成AIが考えるから、人間が考えなくなるとは限りません。
生成AIから言葉が返ってくることで、人間がさらに考え始めることがあります。
対話の相手が一つ増えた
人は、これまでにもさまざまな相手と考えてきました。
家族。
友人。
先生。
同僚。
本。
ノート。
自分の中のもう一人の声。
生成AIは、そこに加わった新しい対話相手です。
人間ではありません。
何でも分かる存在でもありません。
責任を引き受けてくれる存在でもありません。
それでも、いつでも話しかけられ、言葉を返し、考えを映し直してくれる相手にはなれます。
もう一度、話してみる
この本を読み終えたあと、生成AIに何を話せばよいのでしょうか。
特別な言葉を用意する必要はありません。
今、少し気になっていること。
うまく言えないこと。
決められずにいること。
作りたいもの。
今日起きたこと。
そのどれかを、今の言葉で話してみてください。
返事が返ってきたら、すぐに答えだと思わず、読んでみます。
どこに納得したか。
何が違うと思ったか。
何をもう少し聞きたいか。
その反応から、次の言葉を返します。
対話の中で、考えが少し変わるかもしれません。
変わらないかもしれません。
何も決まらない日もあるでしょう。
それでも、話す前には見えていなかった何かが、一つ見えることがあります。
そして、対話を終えたら、現実の中で一つ動きます。
人に話す。
確認する。
書き始める。
休む。
外へ出る。
生成AIとの対話は、そのためにあります。
大事なのは、最初の返事ではありません。
その返事を読んだあなたが、次に何を話すかです。